旧 其の九 杭州:龍井茶の故郷

西湖国際茶文化博覧会(2005年3月26日—4月22日)をやっているというんで、友人の招きで久しぶりに杭州を訪ねてきたんじゃが、いつ行っても西湖周辺は魅力的なところじゃわ。

杭州は中国では「上有天堂、下有蘇杭」(天に天国があり、地上に蘇州・杭州あり)と呼ばれておって、かのマルコポーロが「世界で最も美しい街」と絶賛した、古くは南宋の都だったところなんじゃよ。ここはご承知のように、中国で最も有名な1000年の歴史を持つお茶「龍井茶」の故郷での、そのお茶文化を世界に広めようとして、毎年この博覧会が行なわれておるのじゃ。

年々その規模が大きくなってきての、約一ヶ月間も市をあげてこの会を盛り上げておるんじゃよ。何日かごとに場所を変えて、お茶そのものの製造から品評会や販売、お茶文化や茶芸の紹介など幅広い内容でいっぱいじゃ。日本との茶文化交流会もあって、毎年多くの日本人も訪れておるんじゃよ。

龍井茶は日本茶と同じく緑茶だから、何しろ新茶が尊ばれるんじゃよ。清明節という言葉を中国茶を少しかじってくるとお聞きと思うんじゃが、これは、マア中国人のお盆じゃと思ってくだされ。大体毎年4月の5日前後なんじゃが、3月の半ば過ぎからこの清明節の前に採れたお茶を「明前の龍井茶」といって、希少性もあり人気も価格も別格になるんじゃよ。

女性たちが手摘みで、丹念に採った茶葉は「蓮芯」、「雀舌」と称され、1斤(500g)のお茶を作るのに約2�sの茶葉が必要とされるんじゃ。茶葉がしんなりするくらいに自然乾燥させた後、釜で3時間程、焙煎させて完成させるんじゃが、その工程がプロの技の見せ所なんじゃよ。

かの西太后もこのお茶が大好きでの、彼女に献上されたお茶の茶木(獅峰の朽ちた山門の手前に現存)18本から採れた明前のお茶が、1999年にオークションにかけられ50グラムが約15万円で落札され、その価格が毎年高騰し、昨年は100万円を越したとか。だから、お茶関係者に聞くと、その高級なイメージを利用し、毎年、杭州産の龍井茶といつわったお茶が出回って困るんじゃと。

今年はついに北京で、現地でまだ出来る前に新茶が出回ったとか。嘘かまことかはわからんが、中国らしいお話しが一杯なんじゃよ。

お茶のみならず、「地上の楽園・杭州」は素晴しいところですぞ。 西湖の周りはいくつかの公園に分かれておるんじゃが、どこにもゴミ一つ落ちてないんじゃ。
西湖は周囲約15キロほどの湖なんじゃが、いくつもの景勝地があっての、南宋の時代に「西湖十景」が生まれたんじゃ。その十景の名称がまた素敵なんじゃよ。

同じ漢字文化圏、瞳を閉じるとそこに、西湖の横たわるすがたと、中国楽器の妖しい音色が聞こえてくるじゃろ。そして杭州は龍井茶の故郷であるからのう、中国茶葉研究所や中国茶葉博物館、それに茶聖「陸羽」が天下第三泉と称した「虎砲泉」や、数多くの茶館が点在する街なんじゃよ。お茶好きの方は、一度は必ず訪れなければならない街かも知れませんのう。

また、これまで中国は嫌だと思ってしまわれているお方も、是非一度杭州を訪れてみてくだされ。そして、電動車と徒歩で西湖を一周してみなされ。きっと中国の違った表情を見ることが出来ますぞ。
※ちなみに茶聖陸羽の天下第一泉は「鎮江の中冷泉」、天下第二泉は「無錫の恵泉」

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