旧 其の壱七 2007年 龍井茶(上)

今年は天候が良すぎて龍井茶の新茶がえろう早くから出回っていると聞いての、そんなんで急遽老骨に鞭打って、杭州に飛んだんじゃよ。
杭州は中国では地上の楽園と呼ばれておっての、本当に美しい良いところなんじゃぞ。しかしそんな楽園も新茶のシーズンは中国各地からお茶の買い付けでごったがえすんじゃの。

地元の新聞にもでかでかとそのことが取り上げられておっての。
地元の毎日商報の3月26日版の一面の見出しが
「新茶上市 品茶客擠爆梅家(新茶登場。お茶を買い求める客が殺到)」なんじゃよ。

中国のお茶好きの方の龍井茶に対する思い入れは本当に熱くての、笑ってしまうんじゃが、贋物が氾濫すると言われている中、本物の龍井茶を手に入れるには現地の茶農に行って実際に作っている現場で出来上がるまで待って、出来上がったお茶をその場で購入するしかないんじゃよ、と真顔でおっしゃるからの。

まあ、確かに北京や上海では杭州で茶摘が始まる前から龍井新茶が登場するからの・・・。

ご一緒した方が実際に茶摘をしたいというので、西湖からほど近くの知り合いの梅家の茶農家に連れて行ったんじゃ。ここも観光客相手の小銭稼ぎをしておっての、茶摘体験はランチ付で100元位じゃと、この季節は大繁盛らしいわ。

こんな状況なんで、どの茶農も実は豊かでの。今は、茶摘はみんな外からのアルバイトでの、一日35元位なんじゃと。
安いのと言うと 梅さん一家(梅家の茶農はほとんどみんな梅さん)は うちは食事が全部付いているからいいんじゃと 胸を張って答えておるんじゃよ。茶農は、外部の人間は簡単にはなれず、茶農の権利はしっかり守られておるんじゃそうな。だから茶農に嫁に行くというのはみんなに羨ましがられるんじゃと。

台湾の茶農家の一昔前を見るようじゃの。台湾鹿谷郷の凍頂も貧しかったんじゃが1980年台に凍頂烏龍が一躍有名になるとみんなアッという間に豊かになってしまっての、御殿を建てて車はベンツやBMWじゃよ。凍頂というだけで何しろ作れば作るだけ売れるんじゃからの、まあ、多くの消費者はブームに流されるだけじゃからの。結果農薬は使うわ、茶摘の回数は増えるわで品質も落ちてしまったそうじゃ。
まあ今はその反省で台湾全土で品質向上策が実施されておるようじゃがの。龍井もそうならんことを願うだけじゃわ。

その後、昔の街並みを残した河坊街に出ての、龍井茶専売店の西湖茶荘で初摘み龍井茶を購入したんじゃが、これが一斤2800元じゃよ。
日本円に換算すると百グラム9千円ほどかの。日本の方には到底想像できない値段じゃろ。

中国というのはもともと贈り物の習慣が根強く残っておるところじゃろ、その中でも龍井茶それも初摘みというのは, 特に価値のあるものでの。あっという間に売り切れてしまうんじゃと。

2007年は特に気候が良くての清明節前のお茶が豊富に出回っておっての、質量とも最高の年じゃそうな。

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