旧 其の壱「林文経先生のこと(上)」

爺と林文経(リン・ブンケイ)先生との出会い実はそんな古くわないんじゃ。今からちょうど10年前に爺が中国茶関係の本を執筆しておった時に台湾の茶農から直接話が聞きたくって紹介されたのが林文経先生ご兄弟だったんじゃ。

十大傑出農民(日本の農林大臣賞みたいなもの)を茶農として4回も受賞している大先生と聞いていたんで、どんな堅物かと思っとったんじゃが、えろお人懐っこい先生での、今でもはっきりとその時のことは覚えておるわ。

一緒に食事して酒が入ってくると政治や教育の話しになっての、昔の日本教育を受けている林文経先生がこうおっしゃるんじゃよ。昔の日本時代は良かった、今の台湾は駄目じゃと、何故なら今の教育は一生懸命勉強して偉い人になってお金を儲けろと教える、日本時代は一生懸命勉強して偉い人となってお国の為に尽くしなさいと教えてくれた。

と本当に熱く語るんじゃな。爺も感動しての思わず涙目になってしもうたわ。でも爺は林先生、残念じゃが今の日本は台湾と同じじゃぞと思わず返したがの。確かに戦争は決して良いことじゃ無いかも知れんが国を愛すること、コリャ素晴しいこっちゃぞ。お国の為に尽くせ 日本人が爺がしばらく忘れておった言葉、林先生が思い出させてくれたんじゃな。

お茶についても林先生は同じように熱く語るんじゃよ。今、台湾のお茶の大きな問題は、人件費が上がりコストがかかりすぎていることなんじゃと。その結果、輸入品が氾濫しているらしいんじゃ。

台湾は日本以上に農薬の規制が厳しくなっているが輸入品すべてのチェックは当然のことながら不可能。

まして東南アジアで採れたお茶を最後の仕上げだけ台湾でして”メイドインtaiwan”とされてしまったら、たまったものじゃない、何としてでも茶は直接体の中に入るもの、安全は守らなければならないと。

日本と同じじゃな。

本当の茶作りはかなりの重労働なんじゃ。若者の担い手が減ってきて、廃業するところも毎年のようにあるそうじゃ。

量と価格と安全性、人間は確かに進歩してきておるのかも知れんが、その反面間違いなく大切なものも失っとるんじゃの。

爺にとっても色々なことを考えさせられた、そして異国の地に日本をこんなに愛してくれている人がいることを知った、思いで深い出会いじゃったな。それから家族ぐるみのお付き合いが始まったのじゃよ。

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