旧 其の拾壱 桃園:椪風茶

林文経先生から突然電話があっての、椪風茶(白毫烏龍茶)の品評会で優勝したのでパーテイをやるから是非来てくだされ、というので台湾の桃園縣亀山郷を訪ねてきたんじゃ。

今まで数々の賞を受賞なさってもパーテイなど一切しなかった林先生がどうして? と思ったんじゃが、行ってみてよーく理解出来たわ。 今回の品評会で林先生の茶畑から5つもの賞を取ってしもうたんじゃよ。 最高賞の「特等奨」を息子さんで跡取りの林和春さん、「頭等奨」を林先生と長男のお嫁さん、 それに「貳等奨」と「参等奨」各一人。

これは前代未聞らしいんじゃが、それよりなにより茶畑の跡取り息子の和春さんが「特等奨」に輝いたのが本当に嬉しかったようでの、だから今回のパーテイになったんじゃ。林先生のご自宅に隣接している茶工場で18卓の大宴会での、地区代表の国会議員から農協の代表まで200人ほどで、みんなで祝ったんじゃよ。

地元では”椪風茶”と昔ながらに呼ばれておるが、ほかに色々な呼び名があっての、葉の外観でつけられた”白毫烏龍茶”、ほかに”東方美人茶(オリエンタルビューテイ)”、“香檳烏龍茶”ともよばれておる。台湾北西部の新竹県や桃園県でそのほとんどが生産される、まさしく台湾特産のお茶なんじゃよ。
本来、稲につく害虫のウンカ(小緑葉蝉)が六月頃の茶畑に発生して茶葉を噛むことによって独特の風味を生むお茶での。

真夏に一芯二葉の手摘みという重労働で作られる生産量の限られた貴重な逸品なんじゃな。

烏龍茶(青茶)の中では発酵度も70%以上と高く、したがって紅茶店では紅茶としても販売しておるんじゃよ。でもの素晴しい椪風茶(白毫烏龍茶)を飲んでみなされ、その香りの高さ、妖艶な味わいの深さを知ると、それにレモンやミルク、砂糖を入れようなんて誰も思わんぞな。やはりれっきとした烏龍茶なんじゃの。

また、ウンカという虫も実に気まぐれでの、全く発生しない時もあるんじゃよ。だから今年出来たからといって来年を保証するものでは無いんじゃの。まあ、今年は林農園では数年ぶりのウンカの大発生で良いものが出来たんじゃの。台湾の中部にいくと発生はあまりしないしな、難しいもんじゃ。だから、品評会の受賞茶の値段も毎年うなぎ登りでの、それより何より人気で手に入れること自体も随分難儀になってしもうての・・・。

昨年の「特等奨」受賞茶のオークション落札価格は1斤(600g)88万台湾元、 日本円で100g約50万円ということなんじゃ。すごいじゃろ。

品評会には約5キログラム(8斤)の茶葉を提出するんじゃが、入賞したお茶は他の茶葉が加わらないように、すぐその場でパッキングされラベルを張られ密封されてしまうんじゃよ。まあ、いいことなんじゃが、だからますますブランド志向が高まり値段だけが一人歩きする面もあるんじゃの。

大宴会の後、わざわざ台湾までよく来て下さったと林文経先生の頭等奨のお茶を一缶いただいたんじゃ。これは爺の宝物じゃよ。さてどなたと楽しもうかの?

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